進化学的な言語分析の難しさ.
ヒトは生物である以上,ヒトもまた進化というプロセス上で捉えられる必要があることは間違いない.
進化論の観点から考えると身体的な特徴は比較的説明がしやすいだろう.ヒトは哺乳類という分類に属し,(一般的に)子を卵ではなく母親のお腹の中である程度成長させてから出産させるし,その子供は母親の母乳を栄養源として成長する.これはヒト以外にも他の哺乳類に共通する特徴であり,キツネやネコも同様の特徴を持つ一方,他の類に属する動物では見られない特徴である.これは進化学的に比較的分析しやすい動物間の差異であると言える.
他方,進化学的に分析が難しい差異も存在する.その一つがヒトの言語能力だろう.
なぜ,ヒトの言語能力の進化的分析は困難なのであろうか.いくつか,要因があるがまず重要なのは進化的な分析でよく用いられる他動物との比較という手法が言語においては適用できないことが挙げられる.
これは簡単に言えば,現在の形質等を元に異なる動物間の比較を行う手法であるがヒトの言語能力と比較できるような形質は他動物では現在発見されているとは言えない(一部の鳥類にはヒトの文法能力に近しいものを有する種がいるとの報告が近年は提出されてはいるが)
そのため,ヒトの言語を進化的に分析することは困難になっている.
参考文献
- Bolhuis, J. J., Tattersall, I., Chomsky, N., & Berwick, R. C. (2014). How could language have evolved?. PLoS biology, 12(8), e1001934.