集団生活と自己の家畜化


ヒトは歴史の中で牛や豚などの動物を家畜として飼育してきた. その歴史の中でヒトは 扱いやすい個体を選択して飼育するというプロセスを繰り返してきた. 例えば, 豚を飼育する際、1頭の豚は非常に攻撃的な豚, もう一頭の豚は温厚な豚だとすると, ヒトから見れば温厚な豚の方が扱いやすいため, そちらを優先して飼育する. すると、そういった形質を持った豚が生存し次の世代の子を残す.これを繰り返していくと 自然とヒトに飼育される家畜は,大人しい方向に進化していく. これを家畜化 (domestication)と言う.

この家畜化を得た個体は共通の特性を示すようになる.Toya (2020)によれば具体的には下記のような特性である.いくつか抜粋する.

  • 耳の小型化
  • 鼻腔部の短縮
  • 歯の小型化
  • 従順性の増加
  • 脳あるいは頭蓋容量の小型化

そして,ヒトは集団で生活を営む中で攻撃性を持つ個体を排除してきた.つまり,自分達で自分達を家畜化してきたと言える.このプロセスを自己家畜化 (self-domestination) という.

この自己家畜化のプロセスは人間が集団生活を送り,他者を理解することができる形質を獲得していったことにも関連づけられ,ひいては言語獲得の問題へもつなげることができる.

参考文献

  • 外谷弦太. (2020). 言語進化に関する文献紹介. 認知科学, 27(1), 76-83.
  • 畠山雄二. (2017). 最新理論言語学用語事典.

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