脳の側性化と言語能力
以前の投稿で,人間の脳は右半球と左半球に分けて扱われることをまとめた. ブローカーが指摘したように基本的に人間の言語野は脳の左半球に確認される. しかし, これはすべての人間に当てはまるわけではなく, 例えば小児失語症を発症しその後回復したケースでは、左半球以外で言語能力を実現している例も報告されている.
Vargha-Khadem et al. (1997)はスタージ・ウェーバー症候群 (Sturge-Weber Syndrome) という病気の Alex という少年の例を報告している.
この研究では、Alexという名の少年が8歳半で左半球摘出術を受ける前は言語能力が3-4歳児レベルに停滞していたが,手術後に言語能力が8-10歳児レベルまで向上したと報告されている.
左半球の摘出により、本来左半球に位置する言語野が機能しなくなった場合,右半球がその言語機能を代替する可能性があると考えられる.こういった脳の他の部位が新しく機能を担うような脳の再構成を行う例は他にも確認されている.
ということは, 言語野は他の部位でも生じることがあると考えられる.
参考文献
- Vargha-Khadem, F., Carr, L. J., Isaacs, E., Brett, E., Adams, C., & Mishkin, M. (1997). Onset of speech after left hemispherectomy in a nine-year-old boy. Brain: a journal of neurology, 120(1), 159-182.