併合はいかに発生したか.


ミニマリスト・プログラムでは 言語は最適な設計を行われた完璧な システムであるという前提のもと話を進め理論の簡潔さを目指した結果,Merge (併合) という統語操作に重きを置くこととなった.

この併合は以前の投稿でもまとめていた通り,α と β という2つの入力から γ という第3の要素を生成する操作である.

ここに進化学を加味して考えると 人類は進化の過程で,この併合と言う能力を獲得したことになる. つまり, あるタイミングで突然変異が起こり、その突然変異により併合の能力が発生したと考えられる.

Chomsky とBerwick はこの突然変異を80,000年ほど前に起こった脳の再配線の結果だと考えている.しかし,基本的に進化と言うのはその前駆体となるような存在が先行し、そこから能力の拡張、もしくは流用によって新しい機能が 進化すると考えられている. そのためChomsky とBerwick の80,000年ほど前に起こった脳の再配線の結果という説は進化学的には受け入れ難いものとなっており相性が悪い.

他方, ミニリストプログラムによって、言語の基本特性をMerge (併合)の1点に集約したのは進化学的にも受け入れやすい提案と言えるだろう.

参考文献

  • 岡ノ谷, & 藤田耕司. 言語進化学の未来を共創する.
  • Berwick, R. C., & Chomsky, N. (2016). Why only us: Language and evolution. MIT press.
  • 渡会. チョムスキー言語学講義: 言語はいかにして進化したか.

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