共通認識形成の重要性


先日から誌面討論の内容をまとめている. その中で非常に重要な点が記載されており, 最近私も異分野のメンバーから指摘を受けた経験があったため, タイムリーな内容としてまとめておきたい. 端的にまとめると, 次のような提起である. 言語理論を構築する際に脳機能データを観察事実として含めると, 現行の理論がそのデータと一致しない場合, 理論の修正が求められる. しかし, 伝統的に言語学者は母語話者の文法性判断に基づいて理論を構築してきたため, 脳機能データに基づいて理論を変更することに抵抗がある. このような状況では, 脳機能データが理論を支持する場合にのみ観察事実として認めるべきかという疑問が生じるが, これでは観察事実の役割を果たさない. また, 脳科学者と言語学者の間で観察事実に関する合意形成が必要であるが, それが近い将来達成される見込みは低い. という指摘である.

個人的には, 特に脳科学者と言語学者の間で観察事実に関する合意形成が非常に重要であると考える. 先日, バイオ系の研究者と話していた時にEEGの信頼性についての話題が出た. やはり, 分野が異なるとツールに対する理解や信頼度も異なり, 一方の分野では信頼に足ると考えられていたものが, もう一方の分野では全く信頼に足らないという異分野間での差を感じる経験であった. これを埋めるためにも, 他分野間での合意形成は非常に重要であると考える.

参考文献

  • 尾島司郎, 宮川繁, 岡ノ谷一夫, 成田広樹, 飯島和樹, & 酒井邦嘉. (2014). 紙上討論 人間以外の動物に文法は使えるのか?. BRAIN and NERVE, 66(3), 273-281.

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