論理的な意味探索
言葉の意味を論理的に捉えることは極めて難しい. Chomskyが意味よりも文法に焦点を当てたのもこの困難さに起因する. しかし, 言葉の意味を論理的に扱うことを目指す分野も存在する. 探索意味論(Inquisitive semantics)はその一例である. 例えば, Hamblin(1973)は疑問文の意味を, さまざまな状況においてその疑問に対して考えられる「可能な返答」(possible answers)から成る命題の集合として捉えた. このような発想に基づき, 意味を集合論的に分析することが可能となる. この理論は, 会話を情報交換のプロセスとして形式的に捉え, それをシステム化することに成功しており, その実用性から広く受け入れられている.
探索意味論の特徴が特に明確に表れるのは, 以下のような選言文である.
(1) John comes or Mary comes.
探索意味論では, 命題は一つまたは複数の可能性から構成される. これらの可能性は, 探索意味論において「インデックス」と呼ばれる可能世界の集合を指す.
例えば, (1) は, Johnが来る世界の集合とMaryが来る世界の集合という二つの可能性から成り立っている. 1は真, 0は偽を示している. 選言文には二つの主要な役割がある. 一つ目は, 複数の選択肢があることを相手に伝え, その中から選択する機会を提供することである. 二つ目は, 「(1)」が成り立たない場合, すなわち 0, 0 のようにどちらも真でない世界を排除することである.
参考文献
- 畠山雄二. (2017). 最新理論言語学用語事典.