脳を観察する際の実験


脳を研究として観察する場合には実験が必要であり, そのためには実験をデザインする必要がある.

この実験デザインには様々な手法があるが, 代表的なものとしてブロックデザイン(block design)とイベントリレイテッドデザイン(event-related design)を紹介する.

それぞれの手法には特有の利点と限界があり, 研究目的に応じて適切に使い分けることが重要である.

ブロックデザインは, 同一の課題を一定の時間ブロックとして繰り返す手法である. 各課題が連続してまとまった時間提示されるため, 脳活動が安定して記録されやすく, これにより信号対雑音比が高くなる. その結果, データの信頼性が向上する. しかし, 課題が長時間続くため, 被験者が課題に順応する可能性があり, これは実験結果に影響を与えるリスクとなる. また, 短い時間で頻繁に変化するイベントを扱うには不向きである. ブロックデザインは信号の安定性を重視する実験に適しており, 解析も比較的容易であるが, 柔軟性には欠けると言える.

一方, イベントリレイテッドデザインは, 課題をランダムなタイミングで提示し, 脳の瞬間的な反応を捉える手法である. 刺激がランダムに提示されるため, 被験者が課題に順応することなく反応を記録でき, 時間解像度が高いという特徴がある. これにより, 瞬間的な脳活動の変化や特定の瞬間に起こる反応を詳細に解析できる. しかし, 短時間のイベントに対する反応は信号が弱く, 信号対雑音比が低下しやすいという課題が存在する. また, データ解析が複雑であり, 高度な統計手法を用いる必要がある.

比較表

特徴 ブロックデザイン イベントリレイテッドデザイン
時間ブロック 長時間のブロック 短時間のイベント
信号対雑音比 高い 低い
順応効果 あり得る 少ない
解析の容易さ 簡便 複雑
柔軟性 低い 高い

参考文献

  • 髙木幸子. (2016). 心理学者による脳科学研究のリアル. 心理学ワールド/日本心理学会 編, (73), 13-16.
  • 横山悟. (2010). 脳からの言語研究入門: 最新の知見から研究方法まで.

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