人間の言語は本能か


言語とは非常に複雑なシステムであり, 人間がどのようにしてこのようなシステムを処理できるのかについては, 多くの議論が行われてきた. 人々によってこの問いに対する答えは様々であるが, 現在の主流派の一つは, ノーム・チョムスキーを始めとする生得主義者の見解である. 彼らの考えによれば, 言語能力は生まれつき備わっているものであり, その能力が人間は言語処理を可能にしているというものである.

生得主義者の中でも著名な研究者に, スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)がいる. 彼の有名な一節を引用する.

But I prefer the admittedly quaint term “instinct.” It conveys the idea that people know how to talk in more or less the sense that spiders know how to spin webs. Web-spinning was not invented by some unsung spider genius and does not depend on having had the right education or on having an aptitude for architecture or the construction trades.
(Pinker, 1994)

しかし私は, 多少古風だが「本能」という言葉を好む. この言葉は, クモが巣を張る方法を知っているのとほぼ同じ意味で, 人々が話し方を知っていることを伝えている. 巣を張ることは, 何らかの無名のクモの天才が発明したものではなく, 正しい教育を受けたり, 建築や建設業への適性があるかどうかに依存していない.
(ChatGPT訳)

ピンカーはこのように, クモが巣を張ることに例え, 人間の言語が本能的なものであると主張している. 一方, 同じ生得主義の中でも, ピンカーの言語観とチョムスキーの言語観には差異が見られ, 非常に興味深い議論が交わされている. この点については, 別の機会にまとめたい.

参考文献

  • Pinker, S. (1994). The language instinct: How the mind creates language.
  • 呉羽真. (2010). 言語起源論と言語の機能–本能説と人工物説. 哲学論叢, 37(別冊), S85-S96.

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