脳科学の知見はいつから言語学と結びつくようになったか


現在の理論言語学は理論の域を超え, 実証研究への応用が進んでいる. 例えば, 原理とパラメータ理論を用いて異なる種類の文法規則が違反された際の脳の処理をERPで観測する実験が行われている. こうした理論言語学の知見を用いた研究は, Hatakeyama (2019) によれば1990年代ごろから積極的に実施されるようになった. 具体的には, P600やN400といった有名な脳波成分の研究をはじめ, ERPを用いた研究が広がり定着した.

また, 容認可能な文を処理している際の脳活動と, 文法もしくは意味違反を含む容認不可能な文を処理している際の脳活動を比較する手法は, 違反パラダイム (violation paradigm) と呼ばれる.

これらの知見を踏まえると, 言語の非侵襲的な実証的研究はおよそ30年の歴史しかない分野であると言える. したがって, この研究分野は未だ発展途上にあり, さらなる研究の余地が多分に存在する.

例えば, 近年盛んに行われているfMRIを用いた研究も, 技術的進展の余地がある. 特に, fMRIの空間分解能は不十分な場合が多く, 精度の向上が求められている. このように, 理論言語学と脳科学の融合は依然として興味深い研究テーマであり, 今後の発展が期待される分野である.

参考文献

  • 畠山雄二.(2019). 理論言語学史

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