今なお続く進化(??)
以前の投稿で、言語に対して、生物進化はまだ終わっていない可能性をまとめた. 今回はその具体例をもう少し見てみたい.
言語進化が生物進化と文化進化の互いに影響し合う循環の中にあるとすれば, 人間が生活する文化や環境のもとでの影響を受け, 言語自体に何かしらの変異を与える可能性は否定できない. それはもしかすると, 遺伝子レベルでの変化を生む可能性もある.
Fujita (2018) は De-diu and Ladd (2007) を例に引きながら下記のようにまとめている.
例えば中国語のような音調言語を話す集団とそうでない集団の遺伝子を比較解析してみると, 脳の成長・発達にかかわる2つの遺伝子 (ASPM とマイクロセファリン) に違いがあることがわかったという (De-diu and Ladd, 2007). これらの遺伝子が最近進化した新しいタイプである集団では, 非音調言語が話される傾向にあるとのことである.
(Fujita, 2018)
(De-diu and Ladd, 2007 は追って読み込みたいと思っているが) この例を見ると, 個別言語の差が遺伝子レベルに影響を与え, その結果として遺伝子レベルでの進化を発現させている可能性は否めない.
不勉強ながら, 私はこういった報告があることを知らず, このレベルでの生物進化が起きているかもしれないというのは大変驚きであった.
参考文献
- 遊佐典昭(編)、杉崎鉱司、小野 創、藤田耕司、田中伸一、池内正幸、谷 明信、尾崎久男、米倉 綽. (シリーズ監修 西原哲雄, 福田稔, 早瀬尚子, 谷口一美). (2018). 言語の獲得・進化・変化―心理言語学、進化言語学、歴史言語学 (言語研究と言語学の進展シリーズ3). 開拓社.