認知能力と言語能力
人間が言語能力によって他の動物よりも複雑な思考ができるようになったということは多くの人が認めるところだろう,一方,その言語能力と認知能力はどのように関係しているだろうか.
人間は小さな数を正確に捉える能力と,大きな集合の規模を大まかに判断する能力の2つを持っている.例えば4つのみかんが目の前にあることを数えることなく瞬時に把握できる.一方,42個のみかんが32個よりも多いことを正確な数を数えることなく直感的に理解できるものである.
つまり,相反するような別々の能力を合わせて使用できる.こういった背景を踏まえて心理学者エリザベス・スペルキー(Elizabeth Spelke)は,子どもが言語を習得する過程において,異なる認知能力を組み合わせる仕組みが影響していると主張している.
この2つの能力は進化的に見ると非常に古く,多くの動物が同様の機能を持っている.つまり,これらは人類固有の能力ではなく,生物の進化において比較的早い段階で備わったものである.しかし,人間が独特なのはこの2つの体系の間を言語によって埋めることが可能になっているという点であるとエリザベス・スペルキーは主張している.
この能力の結果として,人間は1より2が大きいと言った内容や無限までの数を概念化できるようになったというのだ.
参考文献
- 今井, 中島, 西山 & 外池. (2019). チョムスキーの言語理論: その出発点から最新理論まで.