進化言語学と生物言語学は何が違うのか?


言語学はどんどんと学際的な分野にその裾を広げている. その中でも勢いを増しているのが, 進化言語学と生物言語学であろう.

さて, こういった黎明期にある研究は往々にしてその違いや目的において混乱が見られる.

今回の進化言語学と生物言語学も例に漏れず, パッと見たところでは似たような内容を扱っているような印象を受けるかもしれない.

ここに対して, Fujita (2018) が非常に端的で明快な説明をしている.

生物言語学は言語進化の問題に加え,神経科学や遺伝学をはじめ, 言語の生物学的基礎を研究対象とするが,ここでいう言語の進化とは, 第一義的には集団内での遺伝情報の分布の変化を伴う生物進化を指している. これは言語という新しい形質の出現,あるいはその形質を持つ新しい種の出現に関わる問題である.

(Fujita, 2018)

とりわけ強調したいのが, “言語の進化とは, 第一義的には集団内での遺伝情報の分布の変化を伴う生物進化を指している.” という部分である.

この問題はつまり, 人間の言語能力の発現のタイミングを考えることにつながる.

この点を主軸に研究しているのが生物言語学と言えるだろう.

参考文献

  • 遊佐典昭(編)、杉崎鉱司、小野 創、藤田耕司、田中伸一、池内正幸、谷 明信、尾崎久男、米倉 綽. (シリーズ監修 西原哲雄, 福田稔, 早瀬尚子, 谷口一美). (2018). 言語の獲得・進化・変化―心理言語学、進化言語学、歴史言語学 (言語研究と言語学の進展シリーズ3). 開拓社.

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