原始的な言語構造とは?


人間の言語は, その複雑性において, 他の動物と質的に違う部分があると考えられる. 他方で進化上のストーリーを考えると, 原始的には他の動物と似たような特徴を持っていた可能性も検討が可能である.

Progovac (2015)は, この言語進化のストーリーにおいて非常に興味深い提案を行っている. 原始的な統合システムを持った言語は, 2つの単語しか組み合わせられないシステムであったという提案である.

Specifically, my proposal is that the first “sentences”were paratactic (not hierarchical, not headed) combinations of e.g. a “verb” and a “noun” (akin to present-day intransitive small clauses), in which the noun, the only argument of the verb, was absolutive-like, specified as neither subject nor object.¹² To put it in less technical terms, I propose that a proto-sentence was somewhat like a two-slot mold, which could fit just two words, for example one verb and one noun, and as such it could not be transitive, as a transitive structure requires three basic elements, a verb, a subject, and an object.

Progovac(2015,p5)

具体的に言うと、私の提案は、最初の「文」とは、例えば「動詞」と「名詞」の並列的(階層的でなく、主要部を持たない)な組み合わせ(現代の自動詞小節に類似)であったというものである。その組み合わせにおいて、動詞の唯一の項である名詞は絶対格的であり、主語とも目的語とも規定されていなかった¹²。より専門的でない言葉で言えば、原始の文は、例えば動詞1つと名詞1つのように、2つの単語しか収まらない2スロットの鋳型のようなものであったと提案する。そのため、動詞、主語、目的語という3つの基本要素を必要とする他動詞構造にはなり得なかったのである。

(Gemini 訳)

この仮説はいわゆる言語の漸進進化vs跳躍進化の観点で考えると, 漸進進化の方に類するものであるが, 私としても, 言語自体は飛躍的短期間に発達したとは考えられる一方で, 段階的な進化であったと考えているため, その進化上のストーリーは非常に興味深く, かつ受け入れられるものである.

様々な前駆体があり, それが段階的に組み合わさって今の言語になったと考えられるのであれば, 現在の言語に残る様々な特性も説明可能かもしれない.

参考文献

  • Progovac, L. (2015). Evolutionary syntax. Oxford University Press. https://doi.org/10.1093/acprof:oso/9780198736547.001.0001

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