どのように分析を進めるか
人の言語を様々な単位で分析できることは以前から何度もまとめている. その中でもレキシコンに対してどのように単位を仮定するかという問題は非常に難しい.
Nagano (2018)はこの問題の難しさを次のように表現している.
どのようなレキシコン表示を仮定するかという問題は, 分析者が文法の下位部門間の役割分担についてどう考えるかという問題と直結しており, 正解というものはない.
(Nagano, 2018, p. 190)
ここで重要なのはレキシコン表示が文法の分析においても, 役割分担の観点で非常に重要であると指摘していることである. つまりレキシコンの表示の問題は, レキシコン自体だけではなく, それを組み合わせる文法理論においても大きな影響を与える.
Nagano (2018)はこの後で分散形態論の例を出していたが, まさにこの点は, レキシコンをどのように仮定するかによって, 文法理論自体も大きく変遷してしまうことの良い例である.
個人的にはミニマリストプログラムになって以降, Syntaxの担う役割がどんどん削ぎ落とされていき, その削ぎ落とされた部分はレキシコンの研究に移行され委ねられているような感覚を持っている.
そのため, 文法理論の構築とレキシコン表示の問題の緊密さというのは非常に重要なように感じている.
参考文献
- 西原, 哲雄 (編). (2018). 言語の構造と分析―統語論, 音声学・音韻論, 形態論― (言語研究と言語学の進展シリーズ1). 開拓社.