いつ頃から言語は存在したか.
進化言語学の中で重要な検討事項の一つが, 人の言語はいつ頃発生したのかという問題である.
そもそもこれは人の言語とは何であるのかという定義の問題にも関わってくるが, 他の動物と人間の区別として非常に大きなものが言語である. このように言語がいつ発生したのか, いつ頃から存在しているのかといった問いは広く言えば, いつから人間は他の動物と大きな差を持ったのか, いつから人は人として強い特徴を持った状態で存在しているのかといった非常に重要な問題に深く関わっている.
Miyagawa et al. (2025) は, ゲノムの一塩基多型 (SNPs) に焦点を当てた研究に基づき, ホモ・サピエンスの最初の集団分岐が約13万5千年前に起こったことから, 言語能力は少なくともその時点までには存在していたと推定している.
It follows that, if we can identify when the first division occurred, we can with reasonable certainty consider that date to define the lower boundary of when human language was present in the ancestral modern human population. Based on the results of studies focusing on whole genome single nucleotide polymorphisms (SNPs), we estimate that this first division occurred at approximately 135kya.¹
(Miyagawa et al., 2025, p. 2)
したがって, 最初の分岐がいつ起こったかを特定できれば, その日付を, 祖先の現代人集団に人間の言語が存在していた時期の下限を定義するものと合理的な確実性をもって考えることができる. 全ゲノムの一塩基多型(SNP)に焦点を当てた研究の結果に基づき, この最初の分岐は約13万5千年前に起こったと我々は推定する.¹
(Gemini 訳 筆者により一部修正)
ここで疑問となるのは, 約13万5千年前から現在まで非常に長い期間があったのなら, その過程でツギハギの進化は起きなかったのかということである. 言語もまた進化をすると仮定するのであるならば, 約13万5千年という時間は, 何らかの変化を持つには十分な時間であると考えられる. つまり, ここでも進化の跳躍説と漸進説の検討必要性が出てくる.
参考文献
- Miyagawa, S., DeSalle, R., Nóbrega, V. A., Nitschke, R., Okumura, M., & Tattersall, I. (2025). Linguistic capacity was present in the Homo sapiens population 135 thousand years ago. Frontiers in Psychology, 16, 1503900. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1503900