分散形態論(Distributed Morphology, DM)の統語操作について
以前の投稿で分散形態論についてまとめた.
これは語彙に対しても統語的な操作を仮定する理論であった.
ここでは具体的な統語操作を(Spencer, 2019)を参考にしながら見てみたい.
融合 (Fusion)
複数の異なる形態素(Morpheme)を, 単一で分割不可能な一つの形式へと合体させる操作.
分裂 (Fission)
融合とは逆の操作であり, 通常は単一の形態素として扱われる文法機能の束を, 例外的に複数の形式へと分割して実現させる操作.
貧化 (Impoverishment)
特定の文法的な文脈において, 形態素が持つ素性(feature)の一部をルールによって削除する操作.
線形化 (Linearization)
統語論によって生成された, 抽象的で階層的な樹形図構造を, 実際に発話される際の直線的な形態素の配列へと変換する操作である. しかし, 最終的な直線的配列の決定は, 統語部門から独立した音声部門(PF component)において行われるとされる.
これを見てみるとよくわかるが, やはり発想が統語論者にしてみるとかなり馴染みが深いものになっている.
いかに統語論的なアプローチと近いかが良くわかる.
参考文献
- Spencer, A. (2019). Manufacturing consent over distributed morphology. Word Structure, 12(2), 208-259.