物理現象としての音声
音声というのは体の器官を使って調整し産出される音であるということがこれまでの投稿から分かる. さらに言えば, 音というのは空気によって伝わる振動である. それは裏を返せば音声というのもまた空気力学という物理の現象の1つであると言える. そのため, 音声学を考える際には空気力学の理解も必要になる.
例えば, 濁音の発声における空気力学的な問題はその一例である. 濁音を発音する際, 声帯振動を維持するためには, 口腔内に適切な気圧を保つ必要がある. 口腔が完全に閉鎖されていると, 空気の流れが制限され, 圧力が上昇する. この圧力の上昇が声帯振動を困難にし, 濁音の発音における物理的な制約となる.
この制約を克服するために, 「圧力×体積=一定(PV=k)」というボイルの法則が適用される. 口腔内の圧力を上昇させないために, 話者は口腔の体積を増加させる調音動作を行う. 例えば, 口蓋帆を上げたり, 舌を前方に動かしたりすることで, 口腔内の圧力を調整する. これにより, 濁音の発声が可能になる.
空気力学的な観点から音声を考察することは, 音声学の理解を深める上で重要である. 音声は単なる生理的な現象ではなく, 物理的な法則にも従う. したがって, 音声の研究においては, 調音器官の動きだけでなく, 空気の流れや圧力の変化にも注目することが必要である. これにより, 言語音の発生メカニズムをより包括的に理解することができる.
参考文献
- 川原繁人. (2024). ポケモンを使って空気力学を教える: 文理の垣根を超えた言語研究の魅力. 大阪保険医雑誌= Osaka medical practitioners magazine, 52(689), 12-15.