人間の言語は人工か


以前の投稿で, 人間の言語は本能に基づくものであるかという議論をまとめた. それに対して, 言語の「人工物説」というまとめ方をしている興味深い論を拝読した. Kureha (2010) は Tomasello や Deacon の理論をもとに, 生物進化と文化進化の観点から新たな視点を提供している.

言語は, 生物学的に進化した諸能力を利用する形で文化的に進化した「人工物」であり, 生物学的「本能」ではない. これを, 本能説に対して, 言語の「人工物説」と呼ぶことにする (Kureha, 2010).

しかし,この論文を読む限りでは「人工」という語は, 人間が0から1を創造したわけではなく, 言語はむしろ生物学的進化と文化的進化が共進化したものであるという点に留意が必要である. さらに, 人工物説は, 本能説に相対する仮説を提示している. 要点をまとめると以下の3つに集約される.

  1. 非モジュール性
  2. 非生得性
  3. 普遍文法の不在

(Kureha, 2010)

この議論を読んだ際に, 個人的にはこの議論が収斂進化に繋がる可能性を感じた. すなわち, 生物学的な条件が共通する中で, 各言語が似た特徴を持つようになったという考え方である.

参考文献

  • 呉羽真. (2010). 言語起源論と言語の機能–本能説と人工物説. 哲学論叢, 37(別冊), S85-S96.

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