個体数の減少による遺伝的多様性の低下
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生物の進化にはさまざまな要因が影響を与える. 例えば, 急激な環境変化, 疫病, または人間による乱獲によって集団の個体数が急激に減少することがある.
ボトルネック効果 (Bottleneck Effect) は, このような時期に発生する現象であり, 集団の個体数が減少すると遺伝的多様性が著しく低下する. その結果, 個体数が多い場合には自然選択が有害な変異を排除しやすいが, 個体数が少ない場合には自然選択の力が弱まり, 有害な変異が集団内に残りやすくなる. これにより, 種の存続が脅かされる可能性が高くなる.
人間の例としては, パンデミックのようなウイルス感染が発生した場合, 集団内の遺伝的多様性が低下することがある. Yamaguchi (2017) は, 結核に関する例を挙げ, 結核菌に対する自然な耐性を人類が持つようになったと述べている. 結核菌に対する抵抗性を持つ個体が生き残り, その遺伝情報が次世代に伝達されたため, 長期間にわたり結核感染症の罹患率と死亡率が自然に低下したとされる.
参考文献
- Imamoto, M., Nakamura, H., Aibara, M., Hatashima, R., Kimirei, I. A., Kashindye, B. B., … & Nikaido, M. (2024). Severe Bottleneck Impacted the Genomic Structure of Egg-Eating Cichlids in Lake Victoria. Molecular Biology and Evolution, 41(6).
- 山口佳寿博. (2017). 結核の歴史から学ぶボトル・ネック効果の意義. 気管支学, 39(3), 201-202.