第2言語学習者の脳内変化
第2言語を習得することは多くの場合、相当の努力を要する. 英語の学習を始めても、途中で挫折する人も少なくないだろう. 基本的に、第2言語の習得は新しい情報を処理する作業であり、その過程では脳が活性化することが確認されている. 一方で、習熟が進むにつれて脳活動が減少するという報告も存在している.
Umejima & Sakai (2018) の研究によると、第2言語の習熟が進行すると、脳はより効率的に機能するようになる. 英語の動詞の過去形選択課題におけるfMRI実験では、被験者の習熟度の違いに応じて脳の活動が異なることが明らかになった. 習熟度が高まるにつれて、脳の活動範囲は文法中枢に集中し、学習初期に見られる広範な脳活動から省エネ型へと移行することが示された. このことは、習得初期には脳の広範囲が動員されるが、時間の経過とともに特定の領域に集中して効率的な学習が行われることを示唆している.
また、習熟に伴う脳の効率化は他の分野でも見られる可能性がある. 例えば、有名な「10000時間の法則」(科学的かどうかはさておき)によると、特定のスキルの習熟には長時間の訓練が必要であり、この法則は習熟期における脳活動の変遷を反映していると考えられる. これも習得初期から習熟期にかけての脳活動の変遷と捉えることが可能かもしれない.
参考文献
- Umejima, K., & Sakai, K. L. (2018). The brain, the source of multilingualism. Brain and Nerve, 70(6), 633–638.