外心動詞-名詞複合語の進化可能性について


人の言語能力の進化過程については, このブログで何度も投稿してきた.

進化という過程が段階的であるならば, 言語能力に対してもその段階的な過程を想定することは不自然ではない.

Progovac (2015) はExocentric VN compounds (外心動詞-名詞複合語) に着目して, この複合語は原始的な構文である可能性を提起している.

My proposal in this chapter is that VN compounds may represent the best fossils we have for the postulated intransitive, paratactic, two-word grammar stage, which moreover involves a verb(-like element) acting as a proto-predicate. Not only is the structure of these compounds rudimentary and unsyntactic in almost every sense of modern syntactic theory (flat structure, no headedness, no subject/object differentiation, no recursion), but this compound strategy specializes for derogatory reference and insult.

(Progovac, 2015, p. 167)

この章での私の提案は, VN複合語が, 仮定されている自動詞的で等位的な2語文法の段階を示す最良の化石である可能性があるということである. さらに, この段階には原述語として機能する動詞 (のような要素) が含まれる. これらの複合語の構造は, 現代の構文理論のほぼすべての意味において, 初歩的で非統語的である (フラットな構造, 中心性がない, 主語と目的語の区別がない, 再帰性がない) だけでなく, この複合語戦略は蔑称や侮辱に特化している.

(Gemini訳)

この提起は非常に興味深い内容である. とりわけ最近ではフォームセットと呼ばれるような階層を持たないフラットな構造を想定した理論構築の重要性も増していることを踏まえれば, 本来の原始的な言語がフラットで中心性がないものであったと仮定することは, 進化のストーリーとしても辻褄が合う. また, 本稿では深くは触れないが, この複合語が侮辱的な意味合いで使われることに特化しているという指摘も非常に興味深い.

参考文献

  • Progovac, L. (2015). Evolutionary syntax. Oxford University Press.

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