遺伝的多様性に関する現象


生物は進化の過程で多くの要因に影響されてきた. その中でも, 新たな小集団が形成される際に観察される現象として創始者効果 (Founder Effect) が挙げられる. 創始者効果とは, 少数の個体が新しい集団を形成する際に, 親集団の遺伝的多様性の一部しか引き継がれない現象を指す. この結果, 新集団における遺伝的多様性は減少し, 対立遺伝子頻度に特徴的な変化が生じることがある.

創始者効果は, 親集団では希少であった遺伝的疾患が新集団で高頻度となる一方, 親集団で一般的であった疾患遺伝子が消失することがある. さらに, 適応度に悪影響を及ぼす遺伝子は時間の経過とともに自然淘汰によって排除され, 創始者効果の痕跡が消失する場合もある.

この現象は遺伝学だけでなく, 言語学にも応用されることがある. たとえば, 大きな言語集団から小さな集団が移住することで, 言語の変化に影響を与える可能性がある. 日本を例にとると, 海外へ移住した日本人や日本へ移住した外国人が形成する小集団において, 創始者効果の条件が満たされ, その結果, 言語の変化が生じる場合がある.

参考文献

  • 松本和子, & 奥村晶子. (2019). 在日ブラジル人移民のコイネー形成―方言接触, 創始者効果, フィーチャープールの検証―. 社会言語科学, 22(1), 249-262.
  • Kivisild, T. (2013). Founder effect. In S. Maloy & K. Hughes (Eds.), Brenner’s encyclopedia of genetics (2nd ed., pp. 100-101). Academic Press. https://doi.org/10.1016/B978-0-12-374984-0.00552-0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です