音素の多様性について


以前の投稿で創始者効果(Founder Effect)について述べた. この効果は, 言語の音素の多様性がアフリカからの言語拡散という現象でも同様に観察されており, 音素の多様性にも創始者効果が影響している可能性が指摘されている. 本稿では, その可能性を示唆する論文を要約する.

Atkinson (2011)は, 504の言語における音素(音韻)の多様性を分析し, 音素の多様性がアフリカからの距離に応じて減少することを示した. この研究では, ベイズ情報基準や階層的線形モデルを用いて, 話者人口や言語系統といった共変量を統制しながら, 音素多様性が距離と負の相関を持つことを明らかにした. 結果として, アフリカから遠ざかるにつれて音素数が減少する傾向が確認され, これは連続的な創始者効果モデルを強く支持するものである.

この研究は, 言語進化が遺伝的進化と並行して創始者効果の影響を受けている可能性を示唆し, 現代言語のアフリカ起源を裏付ける重要な証拠となった. さらに, 文化的進化における創始者効果が音素多様性の地理的分布にも影響を及ぼしていることを示し, 言語多様性が行動的近代性や文化的複雑性の発展に寄与している可能性についても言及している. これにより, 言語進化の理解における創始者効果の重要性が改めて認められる.

参考文献

  • Atkinson, Q. D. (2011). Phonemic diversity supports a serial founder effect model of language expansion from Africa. Science, 332(6027), 346-349.

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