言語にもみられる自己相似性を持つ構造
最近,言語におけるフラクタル構造に興味があり論文を読んでいる.そこでまずフラクタルとはどういうものかということを自分の中でも整理しておきたい.フラクタル(fractal)とはフランスの数学者マンデルブロ (Mandelbrot) によって考案された非整数次元をもつ図形を指す.この構造を持った図形は,その図形自身をさらに細かく分解した際に,その形が全体と同じ形を再現するという特徴を持つ.具体的な例としてはコッホ曲線が有名である.これは数学者のヘルゲ・フォン・コッホ (Helge von Koch) が提唱したもので,次の操作を繰り返して得られる図形である.
- 線分を3等分する
- 分割した2点を頂点とする正三角形を描画
(補足)この操作を行うと,各ステップで線分が3分の4倍に伸びるため,コッホ曲線の長さは繰り返しを重ねるごとに増加し,無限回の操作を行った場合,その長さは無限になる.
これを繰り返していくと次の図形が得られる.
試行回数 n = 1
試行回数 n = 3
試行回数 n = 5
試行回数 n = 10
試行回数が増えるにつれて図形が複雑になるが,複雑になっても細かい部分を見ていけば同じ図形が存在していることがわかる.これがフラクタル図形の特徴である.この構造(に近似する)は自然界に多数存在しており,血管の分岐や肺の構造等はフラクタル構造を持つと言われる.
また,フラクタルとはマンデルブロの造語であり,元を辿ると英語のfractionと同じ語源の単語から造ったとのこと.
参考文献
- 恩田智彦. (2015). フラクタル表面構造と親水性・撥水性の物理. Journal of the Vacuum Society of Japan, 58(11), 424-430.
- Nakamura, R. (2021, June 28). フラクタルって知っていますか-1.26次元や1.58次元の図形ってどんなものなのだろう-. ニッセイ基礎研究所. https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=68116?site=nli