人間の言語聴取の過程について。


人間は他者の考えを言語を介して受け取り理解することができる。

これもまた何を当然のことを と思うかもしれないが、これも冷静に考えると非常に複雑で特殊な能力である。

そもそも人間の言語の処理能力は目を見張るものがある。1 秒間に2 – 3 単語を受容し理解する。さらに興味深いのは話している最中の文には単語の切れ目が明示的に存在していないにも関わらず、人間は単語を正しく分割し認識できることだろう。

このプロセスは冷静に考えると驚嘆に値する。

この言語聴取のプロセスをまたも樋上 (2012)が今度はFry (1970)を援用し整理している。

1入ってくる音響的情報は、入力に現われる手がかりの複合体に基づいて働く音響的解読機構で処理される。
2音響上の制約の知識が、音響的処理の結果と組み合わされる。つまり、どの位置にせよ、限られた数の音素の組だけが可能である。
3音素の連鎖は、音響的および言語的に一番起こりそうな項目をもとにして、予期される。
4音素の連鎖は、形態素を作る規則についての知識を参考として、各形態素に分割されていく。
5形態素に関する制約が適用され、まづ一番起こりそうに思われる項目から初めて、聞き手の頭の中の自由形式と拘束形式の貯えと照合することによって形態素が見つけられる。
6形態素の連鎖は、聞き手の頭の中に貯えられた語彙項目と照合して、適当な語にまとめられていく。その際、語の選択は、連続の仕方に関する依存関係によって制約を受ける。
7統語上と意味上の制約条件のすべてを満たす語の連続体が形づくられる。
(樋上 2012)

この整理の分かりやすいところは小さい単位(音素)から大きい単位(文)への流れが順を追って整理できるところだろう。

まず、(当然だが)音響的な要素を入力として受容する。それを知識と照合して言語情報に組み上げていく。この過程こそが言語理解であり神経言語学に期待が寄せられる研究分野と言えるだろう。

余談だが、樋上 (2012)は非常に分かりやすく言語習得関連の話がまとまっている。

参考文献

  • 樋上勲, & ヒカミイサオ. (2012). 言語習得のメカニズムー核心と周辺をめぐってー. 大阪観光大学紀要, 12, 81-86.

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