サヴァン以外の(超)多言語習得者


以前の投稿で, サヴァン症候群に分類される多言語話者の例を紹介した. この事例では, 20カ国語を流暢に話すことができたクリストファーというサヴァン症候群の患者を取り上げた.

一方, サヴァン症候群ではないにもかかわらず, 40以上の言語をマスターした例も存在する. その代表例がEmil Krebsである.

Krebsは, サヴァン症候群とは無関係に45〜68の言語を自由に操ったとされる驚異的な多言語話者である. 彼は幼少期から特異な学習能力を発揮し, 独学でフランス語を習得したのをきっかけに多言語の習得を続けた. 成人後も彼の言語学習は継続し, 各曜日に異なる言語を学ぶという独自の学習スケジュールを立てていた. さらに, 40歳を過ぎてからも9週間でアルメニア語を習得し, 母語話者と同等に話せるようになるなど, 年齢に関係なくその学習能力を維持していた.

Krebsの死後, 彼の脳は剖検され, サヴァン症候群に見られる脳構造との比較が行われた. 特に, 言語能力に関連するブローカ野が注目された. 彼の脳では, 44野が非常に対称的で, 45野は非対称的であった. これらの構造的特徴は, 通常の脳と比べて特異であり, Krebsの並外れた言語能力に関与していた可能性が示唆されている.

参考文献

  • Umejima, K., & Sakai, K. L. (2018). The brain, the source of multilingualism. Brain and Nerve, 70(6), 633–638.

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