今なお続く進化(?)
人間の言語に関する進化には2種類の進化, すなわち生物進化(人間が動物の種として, 言語能力というものを獲得することに関する進化)と文化進化(人間が言語能力を獲得した後, 英語や日本語などの個別言語が発達し, その個別言語内で起きてきた進化)が想定されている.
文化進化が現在もなお進行中である事は, 歴史言語学を見ていても明らかであろう. しかし, 冷静に考えてみると, 生物進化自体も今なお進行中の可能性である事は必ずしも否定できない. Fujita (2018)を読んで, そのことにハッとさせられた.
また, 言語の生物進化はまだ終わっておらず, 文化進化と相関しながら現在も進行中であると考える立場もあり, 言語進化の完全な理解には生物進化・文化進化双方の考察が不可欠である.
(Fujita, 2018)
生物進化は文化進化に比べより長いスパンで進行することが想定できるがかといって, 進化自体が終了したとみなす理由は必ずしもない. 言い換えならば, この長いスパンというタイムスケールの大きさにより私は無意識のうちに生物進化が終了したと考えていたのであろう. こういった複合的な視座を持つことができるのが, 進化言語学の面白みである.
参考文献
- 遊佐典昭(編)、杉崎鉱司、小野 創、藤田耕司、田中伸一、池内正幸、谷 明信、尾崎久男、米倉 綽. (シリーズ監修 西原哲雄, 福田稔, 早瀬尚子, 谷口一美). (2018). 言語の獲得・進化・変化―心理言語学、進化言語学、歴史言語学 (言語研究と言語学の進展シリーズ3). 開拓社.