レキシコンとボキャブラリー
以前の投稿で, Cranberry Morphemes(クランベリー形態素)について触れてみた.
今回は, より幅広く「レキシコン」というものと「ボキャブラリー」というものの違いについて触れてみたい.
Nawata (2011) では, 次のようにまとめられている.
ここで, レキシコンとボキャブラリーの役割について触れておく. 前者は形態統語素性を束ねた語彙項目の備蓄であり, 統語部門に回帰的併合の材料を供給する. 対して, 後者は音韻素性と形態統語素性の対応関係のリストで, 統語部門の出力に対して音韻素性を提供する役割を果たしている. 例えば, 英語の定冠詞theに関する語彙的情報は, レキシコンとボキャブラリーで各々 (14a, b) のように記載されている.
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すなわち, レキシコンには統語計算に関係のない音声情報は含まれておらず, それらは形態音韻部門で後から付与されるという考え方を採っているのである.
(Nawata, 2011, p. 74)
レキシコンに対しては様々な議論がなされているが, 本論文を見ると明確にレキシコンとボキャブラリーの違いが書かれている. このように, 統語計算などの観点で言語を分割するのは, 一般の人からすると少々馴染みにくい考え方かもしれないが, このように分割していくことが, 言語学においては科学的な手法と考えられ, 非常に理にかなった考え方であると言えるだろう.
参考文献
- 縄田裕幸. (2011). 極小主義における通時的パラメター変化に関する覚書: 「言語変化の論理的問題」の解消に向けて. 島根大学教育学部紀要, 45, 71-82.