非言語表現の順序


ヒトの言語は外在化(Externalise)される際に線形の順序をもつ. その際に階層構造は一度消失してしまう. ある程度の線形の表現構造はヒト以外の動物でも観察できることから, 線形文法は階層構造を持つ文法の前駆体もしくは少なくとも先行して用いられていた可能性が考慮できる. では, その線形言語はどういった語順で構成されているのだろうか.

Goldin-Meadow et al. (2008)がこの問いに対して参考になるような非常に興味深い報告をあげている. この研究では, 英語, トルコ語, スペイン語, 中国語といった語順が異なる言語使用者が, 言語を使わずに出来事を表現するときにどのような順序を採用するかを検証した. 結果として, 被験者の母語での語順(SVOやSOVなど)とは異なるにもかかわらず, 非言語的表現(ジェスチャーや透明シートの重ね合わせ)では一貫して「行為者–被行為者–行為(actor–patient–act)」の順序を使う傾向が明らかになった. この知見は, 言語が成立する初期段階においてSOV型が自然に生起しやすい事実と対応している点が意義深い. さらに, 言語の有無とは無関係に人間が本質的に持つ認知的傾向を示唆している.

参考文献

  • S. Goldin-Meadow, W.C. So, A. Özyürek, C. Mylander, The natural order of events: How speakers of different languages represent events nonverbally, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.105 (27) 9163-9168,https://doi.org/10.1073/pnas.0710060105 (2008).

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