進化上, 生じる現象


動物が進化する際には, 生存に有利な形質が集団内で急速に広がる現象が起こる. この過程で重要なのが「選択的一掃(Selective sweeps)」である. 今回はこれをStephan (2019)を参考にまとめたい.選択的一掃とは, 有利な遺伝子変異が集団内で急速に固定される際に, 近接する中立的な遺伝子多様性が減少する現象を指す. 例えば, ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)において, 特定の有利なアレルが集団内で広がると, その周囲の中立的なアレルも共に固定され, 多様性が失われることが観察されている.

選択的一掃には「ハードスイープ」と「ソフトスイープ」の二種類が存在する. ハードスイープは新規の有利な突然変異が一つのハプロタイプ上で急速に広がるケースであり, 周囲の遺伝的多様性がほぼ完全に失われる. 一方, ソフトスイープは既存の遺伝変異が選択される場合で, 複数のハプロタイプ上で有利なアレルが存在するため, 多様性が部分的に維持される.

選択的一掃の検出には, 統計的手法が用いられる. 代表的な方法としてCLRテストやSweepFindeなどがあり, これらは集団遺伝学モデルに基づいてゲノム全体から選択的スイープの痕跡を探す. また, 近年では機械学習を用いた手法も開発され, 検出精度が向上している.

しかし, 選択的一掃の解析には課題も存在する. 特に, 集団の歴史的な拡大やボトルネックといったデモグラフィックな要因が選択的一掃の信号と混同される可能性があり, これらを適切に区別することが求められる. さらに, 複数のスイープが同時に発生する「進化的交通」や背景選択との相互作用についても, さらなる研究が必要である.

参考文献

  • Stephan, W. (2019). Selective sweeps. Genetics, 211(1), 5-13.

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