幼児はなぜ完璧な文法を習得できるのか?
我々が日常で接する言語表現は誤りを含んだものや不完全なものが多数ある。
例えば、言い間違いや途中で発話を止めるケースなど様々である。
こういった我々が普段接する言語には誤り等が多数あるのに、乳幼児はそういった誤りは学習せずに最終的には完璧な文法を身に付ける。
もし言語が模倣や経験から学ばれるとしたら、 誤り自体も学習してしまうはずだが幼児はその誤りは除外した形で完璧な文法を身に付ける。
ここで一つ疑問が浮かぶ。幼児が触れる言語経験は不完全かつ誤りを含むのに、どうして完璧な文法を習得できるのか?という問題だ。
この問題をチョムスキーはThe Poverty of Stimulus 刺激の貧困 として問題提起した。
ちなみにこの問題は古くはプラトンも問題提起しており、プラトンはより広く、なぜ我々は限られた経験から、それ以上のことを知識として有することができるのかという問いを立てていたが、これを言語に特化した形で考えたのが刺激の貧困と捉えて良いだろう。
そして、チョムスキーはこの問いへの答えとして人間は生まれながらにして言語を習得する能力を有しているという生成文法の展開へと繋げていく。
参考文献
- 原口庄輔, & 中村捷. (1992). チョムスキー理論辞典. 東 京: 研 究 社 出 版.