Generative Syntax のレクチャーのまとめ。

Generative Syntax Lecture1の続きである。

前回は、文には階層構造があるということをみた。句構造規則である

しかし実は、句構造規則には問題点があった。それは強力すぎたということだ。この理論では文法的に正しくない文でも分析が可能になってしまうのだ。

そこで登場するのがX’ Theory(X bar理論)である。

この理論は、自然言語における全ての句をXPという構図とそのコンビネーションで記述することが可能だと主張する。このXというのは数学と同じで任意のものという意味である。言語学における理論なので、この任意のものとは当然数字ではない。ここでは任意の語彙範疇(lexical category)を示す。XPとはそのXを主要部(head)とする句(Phrase)である。名詞句や形容詞句、前置詞句は全てこの構図で示すことができると主張する。X bar理論は次のことを定める。

  • あらゆる句は主要部を持つ。
  • 主要部とそれによって定まる補部(complement)がX’という中間投射(feature projection)を形成する。
  • 主要部によって定まらない、随意的な付加部(adjunct)がある場合はその上層に新たなX’を形成する。
  • 指定部(Specifier)がX’を限定し、投射を閉じる、これが最大投射(maximal projection)つまり句と成る。

ものすごく難しくなってきたので、例を見ながら考えよう。

例えば、the distraction of Tokyo Tower on Fridayという名詞句(NP)を見てみよう。XにNを代入したと考えれば良い。distractionという名詞(Noun)を主要部(head)とする句である。

そして、of Tokyo Towerというのが補部になる。ここで主要部はdistractionなのでof Tokyo Towerという補部(complement)は可能である。しかし例えば、*the distraction of fish on Fridayは主要部と適切な関係をなさない。主要部とそれによって定まる補部というのはこういった関係性のことを意味する。

一方、on FridayというPPは主要部によって定まらない。さらに言えば、あっても無くても構わない要素である。つまり、随意的な付加部(adjunct)となるのだ。complementとadjunctの違いはここにある。

最後にtheという指定部(specifier)が投射を指定する。これが最大投射であり、名詞句(Noun Phrase)が完結するのだ。

 

 

X’ Theory

X’ Theoryの原則をもう一度記しておくと

  • あらゆる句は主要部を持つ。
  • 主要部とそれによって定まる補部(complement)がX’という中間投射(feature projection)を形成する。
  • 主要部によって定まらない、随意的な付加部(adjunct)がある場合はその上層に新たなX’を形成する。
  • 指定部(Specifier)がX’を限定し、投射を閉じる、これが最大投射(maximal projection)つまり句と成る。

ということであった。

しかし、これだと句構造規則で定義した S→NP Aux VP というモデルが適用できない。このモデルでは三股が形成されてしまうからだ。

X’ Theoryでの記述方法

では、この問題をどのようにしてX’ Theoryは克服するだろうか?その解決方法は

  • Auxをhead
  • NPをspecifier
  • VPをcomplement

として扱うことである。これにより、全てを二股の階層構造で記述することを可能にする。

例を見てみよう。以前の句構造規則ではThe agent will go to Madridという文をこのように分析していた。

一方、X’ Theroryで分析するとこうなる。IとはInflectionのことで、主語と動詞の一致(subject-verb agreement)と時制(tense)の情報を持つ。英語においてIはこれらの要素が担う。

  • 法動詞(modal auxiliary) will, must, should, etc
  • 助動詞 (auxiliary) have, be
  • do
  • 無し(null) [tenseとagreementが動詞によって実現されている状態]

これで全ての要素を二股でつなげることが可能になったことが分かる。

 

補文標識(complementizer)

ある文が別の文に埋め込まれている時には、補文標識(complementizer)という考え方を使う。この考え方は、補文標識が節の主要部(head)になるという考え方だ。

これも例文を見ながら確認していこう。

I think that Ken can speak Japanese. という文を考えてみる。見て分かる通り、I thinkという文にKen can speak Japaneseという別の文がthatを用いて埋め込まれている。Ken can speak Japanese. はIPであることが分かる。このことから、樹形図を書くとこうなる。

また、補文標識(complementizer)はいくつかの種類に分けることができる。(日本語の部分は私が個人的に訳したものである。)

 

A. 平叙形補文(declarative complement clause)

I think [that Ken can speak Japanese]

B. 埋め込み/間接疑問 補文(embedded/indirect question)

I wonder[ whether Ken can speak Japanese]

C.理由補文(reason-clause)

I am glad [because Ken can speak Japanese]

D.条件補文(conditional clause)

If Ken can speak Japanese, he can get a good job.

 

限定詞=主要部(determiner=head)

また、この理論で面白いのはthe,this,someなどの限定詞(determiner)を主要部(head)として捉えることだ。

例えば、 the blue hatを分析するとこうなる。

 

属格/所有格  (genitive/possessive)

 

John’sやthe girl’sなどの-‘sはこのように分析される。

 

固有名詞・代名詞 proper noun/pronouns

固有名詞・代名詞はそれぞれ以下のように分析される。

 

 

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