Chomskyの定義するI-language(内的言語)とE-language(外的言語)をまとめる。
歴史を辿ってまとめてみる。
研究の初期段階で、Chomskyは言語を能力 ( competence ) と運用(performance)に区別した。能力の側を言語の本質として捉え、その能力から産出された外界での表象は運用の結果だと捉えたのだ。
能力と運用は、構造と機能と言い換えることも可能だ。
言語にはあらかじめ決まった構造があり、その構造に従って働く機能が我々の言語表現を産出しているということができる。
能力は話者-聞き手の言語の内的な知識(つまり文法)であり、パフォーマンスは現実の実際の状況での能力の使用である。能力がパフォーマンスを生成するのである。
例えば、話者は時折、言い間違いや会話内での誤解などで言語を誤って用いることがあるが、これは能力は完全なものの運用においてエラーが起こったと考えることができる。
Linguistic theory is concerned primarily with an ideal speaker-listener, in a completely homogeneous speech-community, who knows its language perfect- ly and is unaffected by such grammatically irrelevant conditions as memory limitations, distractions, shifts of attention and interest, and errors (random or char- acteristic) in applying his knowledge of the language in actual performance.
(Chomsky 1965: 3)
(ChatGPT翻訳)
言語学の理論は、完全に均質な言語共同体の中の理想的な話者-聞き手に関係しています。彼はその言語を完璧に知り、記憶制限、注意のシフト、興味の変化、実際のパフォーマンスでの知識の適用におけるエラー(ランダムまたは特徴的なエラー)など、文法的に関係のない条件に影響されません(Chomsky 1965: 3)。
これらの能力 ( competence ) と運用(performance)という概念がのちに、それぞれI-language(内的言語)とE-language(外的言語)という風に修正させられる。
Chomskyは能力の側を言語の本質として捉えたので、言語を人間のmind(心もしくは精神)に内在するシステムだと考える。
The I-language, then, is some element of the mind of the person who knows the language, acquired by the learner, and used by the speaker-hearer.
(Chomsky 1986: 22)
(ChatGPT翻訳)
「I言語とは、言語を知っている人の心の要素であり、学習者が獲得し、話者-聞き手が使用するものです」(Chomsky 1986: 22)。
参考文献
Ingram, J. (2007). Neurolinguistics: An Introduction to Spoken Language Processing and its Disorders (Cambridge Textbooks in Linguistics). Cambridge: Cambridge University Press. doi:10.1017/CBO9780511618963
Araki, N. (2017). „Chomsky’s I-language and E-language “. Hiroshima Institute of Technology Research, 17-24.
藤田耕司. (2003). 生物言語学の展開-生成文法から見た言語発生の諸問題. Viva origino, 31(2), 104-121.
Chomsky, Noam. Aspects of the Theory of Syntax. The MIT Press. 1965.
Chomsky, Noam. Knowledge of Language: Its Nature, Origin, and Use. Praeger. 1986.