併合はいかに発生したかを具体的に考える.


前回の投稿で併合の起源について投稿した.

Chomsky とBerwick はこの突然変異を80,000年ほど前に起こった脳の再配線の結果だと考えているが,進化学的には受け入れ難いという内容である.

今回はその問題を解消するための具体的な仮説についてまとめる.

Fujita (2012)では,併合は外界の道具を使用する際に観察できる再帰的かつ反復的な操作能力が併合の前適応であったという説を提唱する.

Greenfield (1972) のヒトの幼児とチンパンジーで大きさの違うコップに対する操作を比較した実験を行った.その結果として,チンパンジーは,同じ容器に対して繰り返し他の容器を入れる(または重ねる)ことで三組の構造を作ったが,これに対してヒト幼児は一度容器として使ったカップを部品として別のカップに入れるという再帰的な操作によって構造を作るという違いが見られた.

これはヒトにおいては道具の操作に関しても再帰的な操作が観測されたことを意味する.この能力を前駆体としそれが言語能力と組み合わさった結果,ヒトの言語能力においてのみ再帰的な階層構造が発言したのではないかと考えられる.

参考文献

  • Greenfield, P. M., Nelson, K., & Saltzman, E. (1972). The development of rulebound strategies for manipulating seriated cups: A parallel between action and grammar. Cognitive psychology, 3(2), 291-310.
  • 藤田, 岡ノ谷, & 浅田. (2012). 進化言語学の構築: 新しい人間科学を目指して.

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