言語処理の発達したモデル
言語処理の脳科学的な研究はブローカの失語症の研究から本格的になったと 言うことができるが, 当時は技術的な制約で脳の観察に限界があった.
他方、現代では、CTやfMRIの開発により非侵襲的で精密な脳活動の測定が可能になった. このことからブローカの時代に比べ脳に関する研究が飛躍的に進み, 言語の研究でも、新しい知見が蓄積されている.
その知見を踏まえて、提案された言語処理のモデルとしてdual stream model というものが提唱されている.このモデルでは言語情報の処理が二つの経路で行われることを想定している。まず両側の上側頭回背側面で音響解析が行われ、その後、上側頭溝後部で音韻情報が処理される。そこから、腹側経路と背側経路に分かれて処理が進む。さらにこのモデルによると,腹側経路では、両側の中側頭回中〜後部が語彙処理の中継点となり、意味情報へと変換される。また、側頭葉の前方領域は意味・語彙情報と統語情報の両方に関連しているとされている。一方、背側経路は左半球に集中しており、シルビウス裂後部の頭頂・側頭接合部が感覚運動情報のインターフェースとして機能する。ここでは、Broca野や背側運動前野が構音や運動情報の変換、統語処理を担っている。
参考文献
- 東山雄一, & 田中章景. (2021). 機能画像からみる言語と脳の関係: 言語ネットワークはどこまでわかったのか. 神経心理学, 37(4), 272-290.