他の動物でのFOXP2遺伝子の考察 Part 2


言語能力への関与が示唆されている遺伝子としてFOXP2遺伝子の存在について投稿し,さらにその遺伝子に対してマウスの研究例を紹介した. 今回はさらに別の例を紹介したい.

まず,この遺伝子のヒトとチンパンジーの違いだが,Enard et al. (2002) によればこれは 2 箇所の違いしか認められれない.具体的にはアミノ酸の T303N と N325S の2つである.(補足として,ネアンデルタール人も現生人類と同様の配置を持っていたことが確かめられている.)

さらに鳥類でも FOXP2 についての研究例があがっている.若いキンカチョウは歌を学習する能力を持っているが,FOXP2 をノックダウンさせると歌の学習が不完全になるとの結果も出ている.

こういった結果を踏まえると,FOXP2 は学習のメカニズムに影響を与えている可能性も示唆できる.他方,言語能力はその能力の単位をどう設定するかも重要であり,機能単位での再考も必要であると考える.

いずれにせよ,どの研究でも遺伝的基盤と言語能力を結びつけることができれば言語の生得性についての研究も飛躍的に進むことは間違いなく,多方面からの研究の重要性は引き続き変わらない.

参考文献

  • Enard, W., Przeworski, M., Fisher, S. E., Lai, C. S., Wiebe, V., Kitano, T., … & Pääbo, S. (2002). Molecular evolution of FOXP2, a gene involved in speech and language. Nature, 418(6900), 869-872.
  • 藤田, 岡ノ谷, & 浅田. (2012). 進化言語学の構築: 新しい人間科学を目指して.
  • 福武敏夫. (2021). ふしぎ発見 文字の世界 なるほど!. 神経心理学, 37(3), 191-200.

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