言語の複雑さの違い


近年の研究では, 人間以外の動物の言語に関しても様々な報告がなされており, 特に鳥類の言語において非常に発達した文法性が指摘されている. しかし, この分野は未だ発展途上であり, 10年ほど前の文献にはなるが, 鳥の文法性について結論を出すのは早計であると主張する研究も存在する. Beckers et al. (2012) は, 鳥類が複雑な言語能力を有するという考えに対し, そのような言語能力を仮定せずとも一般的なパターン認識や記憶能力で説明可能であると論じている. 著者らは, 文脈自由文法を用いた言語学習が可能であるとされるベンガルフィンチの実験結果を再評価し, これらの鳥が文脈自由文法を獲得した証拠は確実ではなく, より単純な音響的類似性や繰り返しパターンの認識に基づいている可能性を示唆している. この点は, 鳥類の言語能力に関する認識を再考する重要な示唆を提供しており, 複雑な文法理論を適用する前に, より基本的な認知機能の検討が求められる.

こうした分析は, 生物学的な言語の起源と進化に対する理解を深めるための新たな視点を提供している. より厳密な実験設計と科学的根拠に基づいた方法論が要求され, 鳥類の言語能力に関するさらなる研究が期待される.

参考文献

  • Beckers, G. J., Bolhuis, J. J., Okanoya, K., & Berwick, R. C. (2012). Birdsong neurolinguistics: Songbird context-free grammar claim is premature. Neuroreport, 23(3), 139-145.

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