言語変化とパラメーター理論


生成文法では通時的文法変化も研究の射程にとらえなければならない. そして, Principles and Parameters 以降の生成文法では, この変化を言語習得の際に設定されるパラメーターの値によって生じるものと考える.
この際各世代のI言語(gᵢ)は, 親世代が産出するE言語(gᵢ₋₁のE言語)を一次言語資料(PLD)として獲得することになるが, この点においてClark and Roberts (1993)で提起された「言語変化の論理的問題」を元にし, Nawata (2011)が整理している内容を引用したい.

\displaystyle \text{ある世代 } g_i \text{ においてパラメーター } p \text{ の値が } v_i \text{ であるとする.}\\ \text{パラメーター変化は, 次の世代 } g_{i+1} \text{ が } g_i \text{ の産出する PLD } d_i  \text{ に基づいて } p \text{ を } v_k (\neq v_i) \text{ と設定する場合に生じるが,}\\ \text{そのためには } d_i \text{ が } d_{i-1} \text{ と異なっていなければならない.}

(Nawata, 2011)

これは非常に重要な観点であり, 言語変化に関する問いを洗練して表現したものであるといえる. 言語獲得ではインプットの重要性がかねてより議論されているが, これが次世代の言語変化にどのような形を与えるかを明示的に示している.

参考文献

  • 縄田裕幸. (2011). 極小主義における通時的パラメター変化に関する覚書—「言語変化の論理的問題」 の解消に向けて—. 島根大学教育学部紀要 (人文・社会科学), 45, 71-82.
  • Clark, Robin and Ian Roberts (1993)“A Computational Model of Language Learnability and Language Change,”Linguistic Inquiry 24, 299-345.

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