個体発生と系統発生


以前の投稿においてOntogenyとPhylogenyについて概説したが, 今回はこの2つの概念を改めて整理し, 言語に関する視点から考察する.
OntogenyとPhylogenyは, それぞれ個体発生および系統発生と訳され, その語が示す通り, 着目点が個体か系統かという点に違いがある.

個体発生とは, 受精卵から成熟個体に至るまでの発生過程を指し, 細胞分裂, 組織分化, 形態形成などの生物学的プロセスを含む.
一方, 系統発生とは, 生物群が共通祖先から分岐し進化してきた歴史的関係を示すものであり, 形態学的特徴や分子遺伝学的データに基づいて系統樹を構築し, その進化的関係性を明らかにすることが目的である.

両者は異なる時間スケールで観察される現象であるが, 進化発生生物学(evolutionary developmental biology, 通称evo-devo)の進展により, 個体発生の過程が進化に与える影響, また進化上の制約が個体発生にどのように反映されるかについての理解が深まりつつある.

この枠組みを言語の視点に適用すれば, 以下のような対比が可能となる.

個体発生的視点:
幼児期における言語習得において, 子どもはまず単純な語句やフレーズを用いる段階から始まり, 徐々に文法的規則を内在化し, 生産的な言語運用へと発達していく.

系統発生的視点:
非ヒト霊長類, たとえばチンパンジーにおける手話習得の研究では, ヒト幼児のような初期的コミュニケーションパターンは観察されるものの, 複雑な文法構造を自律的に生成する段階には至らないとされている.
これは, ヒトの言語能力が進化の過程でいかに特異的に発達してきたかを示唆する重要な証拠である.

参考文献

  • Yang, C. (2013). Ontogeny and phylogeny of language. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(16), 6324-6327.

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