移動する副詞句


以前の投稿でAcross-the-Board movement (ATB)がIP句でも観察されることを見た.

今回は, 副詞句の観察をDe Vries (2017)の例を元に行いたい.

How fast did John speak _ and Mary write _ during the meeting?

(De Vries, 2017, p. 4)

この例文は, 一つのwh句How fastが, speakとwriteという二つの動詞を修飾する並列な位置から, 一度に抽出されたことを示している. 「ジョンの話す速さ」と「メアリーの書く速さ」という, 二つの異なる出来事の様態を同時に尋ねる役割を担っているということだ. つまり, ATBでは副詞句でも要素が抽出される移動が観察できるということになる.このことはATBが起きる背景には動詞の語彙的な要求(どの項を必要とするか)の充足や共有にあるのではなく, 純粋に構造的な並列性そのものにある可能性を示唆している.

これは従来のCoordinate Structure Constraint(CSC)の制約を満たさずとも文法的な文を生成する例外的なケースの具体的な1例と言えるが, 並列的な構造自体が認可を出すような発想はある種, 構文文法的な発想で捉えられるかもしれない. 非常に興味深い現象である.

参考文献

  • De Vries, M. (2017). Across‐the‐board phenomena. The Wiley Blackwell Companion to Syntax, Second Edition, 1-31.

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