言語の移動について
人間の言語には, 移動という現象が普遍的に見られる. 従来の言語理論では, この移動というものは, なぜ発生するのかといった問いがあった. 現在ではこの移動という操作は併合(Merge), とりわけ内的併合(Internal Merge)という形に捉え直され検討されているが, Chomsky (2004) はこの移動自体を捉え直すことで, 言語の完全性について議論している.
It is hard to think of a simpler approach than allowing internal Merge (a grammatical transformation), an operation that is freely available. Accordingly, displacement is not an “imperfection” of language; its absence would be an imperfection.
(Chomsky, 2004, p. 110)
移動は言語に普遍的に見られる現象であり, いかなる理論においても何らかの方法で捉えられなければならない. 自由に利用できる操作である内的併合(文法変形)を許容することより単純なアプローチを考えるのは難しい. したがって, 移動は言語の「不完全性」ではない. むしろ, それがないことこそが不完全性であろう.
(Gemini 訳)
移動がないことこそ不完全であるという逆転の発想は非常に興味深い. これもまた説明的妥当性を超えるための必要な捉え方の再修正であろう.
参考文献
- Chomsky, N. (2004). Beyond explanatory adequacy. In Structures and beyond: The cartography of syntactic structures (Vol. 3, pp. 104–131).