システムの非対称性と多言語間の差


人間の言語には, 日本語や英語やフランス語など様々な個別言語が存在する.

生成文法をやっているとよく, 個別言語の差異と普遍性について疑問をもらうことが多い.

Chomsky (2010)はこの問いについてインターフェイス関係の非対称性をもとに考察を行なっている.

Still to be addressed is the second of the salient puzzling questions: Why are there so many languages?That seems curious, and a violation of the spirit of SMT.There have been suggestions over the years, ranging from sociological/ cultural to possible minimax optimization. None seem compelling.Asymmetry of interface relations suggests an alternative: perhaps it is not a matter of evolution of language at all.Externalization is not a simple task. It has to relate two quite distinct systems: one is an SM system that appears to have been basically intact for hundreds of thousands of years; the second is a newly emerged computational system for thought, which approaches perfect design insofar as SMT is correct.

(Chomsky, 2010, p. 60)

未だ解決されていないのは, 際立って不可解な問いの第二のものである. なぜこれほど多くの言語が存在するのか. それは奇妙に思われ, SMT(強いミニマリストのテーゼ)の精神に反するものである. 長年にわたり, 社会学的・文化的なものから, あり得るミニマックス最適化に至るまで, 様々な示唆がなされてきた. 説得力のあるものは一つもないように思われる. インターフェイス関係の非対称性は, 別の可能性を示唆している. おそらく, それは言語の進化の問題では全くないのかもしれない. 外在化 (Externalization) は単純な作業ではない. それは, 全く異なる二つの体系を関連付けなければならない. 一つは, 何十万年もの間, 基本的に損なわれずにきたと思われるSM(感覚運動)系であり, もう一つは, 思考のための新たに登場した計算体系であり, SMTが正しい限りにおいて, これは完全な設計に近づく.

(Gemini訳)

本来存在していたシステム(SMシステム)と新たに登場した計算システムの全く異なる二つの体系は, その非対称的な観点から様々な差異を生みだす.

新しい体系は思考のための計算システムであり, SMシステムによる外在化はそれと結びついた副次的な処理のプロセスと考えればなぜここまで多くの個別言語が発生したかの一つの理由になり得るだろう.

参考文献

  • Chomsky, N. (2010). Some simple evo devo theses: How true might they be for language. The evolution of human language, pp. 45-62.

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