産出は最小


生成文法のミニマリストプログラムでは, 構造構築操作であるMergeが新たなSyntactic Object(統語体)を生成していくと考えられている. しかし, その際の生成に一般的な要因であるThird Factor(第3要因)の影響は無視できない. そのため, ミニマリストプログラムではMinimal Yield:MY(最小産出)という条件を想定する. これはさらなる操作の対象となりうる新しい要素を可能な限り少なく, 理想的には一つだけ生成すべきであるという条件である. 具体的に見ればMerge(P, Q)は {P, Q} という新たな要素を一つだけ生成し, 操作の対象となった P や Q は作業領域から消え去ると想定する.

これはSMTから導かれる計算効率の原則の一つであり, これにより例えば島の制約を無視して生成が想定されてしまう非文などの過剰生成を原理的にブロックできる.

こういった事例を見ていくと, 今まで普遍文法内で説明が難しかった過剰生成の抑制の理由などが第3要因で説明できることがわかる. 他方で第3要因を導入したことにより今まで使えていた説明が使えなくなった部分もあるので, その点はさらなる研究が必要であろう.

参考文献

  • Chomsky, N. (2021). Minimalism: Where are we now, and where can we hope to go. Gengo Kenkyu (Journal of the Linguistic Society of Japan), 160, 1-41.

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