音形を持たない要素


生成文法は実際に観測できる要素と, 直接観測はできないが存在を仮定することで理論的な整合性を高められる要素の2つを用いて理論構築をしていると言える.

その中の1つの要素にPROと呼ばれる要素が存在する. 今回はそれを見てみたい.

Chomskyによるθ-criterionでは各項は一つのθ役割を担い, 割り当てられるという基準が設定された. しかし, この中でいくつか問題が発生し, とりわけ非定形節は問題になった. ここで登場してきたのがPROと呼ばれる概念である. この概念は, 現在のミニマリストプログラムでは基本的に使われていないが, 統率束縛理論 (Government and Binding Theory, GB) の時代に重要な概念であったため, 今回まとめておきたい.

PROは, 非定形節の指定部(主語の位置)に現れる, 音形を持たない(phonetically null)決定詞句 (DP)であり, 空範疇の一種である. θ基準と拡大投射原理 (EPP) を満たすために理論上要請される.

こういった音形を持たない要素を仮定することで, 理論的な充実度を高めてきているが, 一方で, こういった要素は, ともすれば実際の観測から乖離した現象も想定できてしまうためその扱いには非常に注意が必要である.

参考文献

  • Al-Kajela, A. (2015). PRO theory. WORD, 61(1), 25-38.

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