格助詞の処理は統語部門ではない?
日本語の格助詞は, その分析方法において, 様々な分析軸が用いられている. Sakai (2006) は, 日本語の格助詞システムが狭義の統語部門ではなく, PF(音韻形式)部門で処理されているという提案をしており非常に興味深い.
それを示す証拠として, 以下のような例が挙げられている.
[自民党から外務大臣に山田氏] と [保守党から財務大臣に鈴木氏] (と)]-が就任した.(筆者訳: [From the Liberal Democratic Party, Mr. Yamada (assumed) the minister of foreign affairs] and [from the Conservative Party, Mr. Suzuki assumed the minister of finance].)
(Sakai, 2006)
これらの例では, 統語的には非構成素(non-constituent)である要素の連なりに対して格助詞「が」が付与されている. この事実は, 格助詞の付与が狭義の統語構造に基づく操作ではなく, PF部門における音韻/形態的な処理であることを示唆している.
参考文献
Sakai, H. (2006). The visibility guideline for functional categories: Verb-raising in Japanese and related issues. In Theoretical comparative syntax (pp. 289-336). Routledge.