フェイズが完成されるタイミング


現在の最新のミニマリストプログラムでは, 言語の計算というのは, 統語的な派生が周期的な単位で進行していくと仮定されている. この単位をフェイズと表現するが, この周期的な派生というのはCPとv*Pが想定されている.

CPとv*Pがフェイズであるという仮説は, いくつかの経験的証拠に基づいている.

第一に, これらは文の命題内容が完成する単位と見なせる. v*Pは完全な述語項構造(主語, 目的語など)が揃う領域であり, CPは時制や法性を含む完全な節構造が形成される領域である.

第二に, 構造格の付与や一致といった統語操作が, これらの領域で完結することが多い.

第三に, 連続循環的な移動において, 移動句が一時的に留まる場所が, これらの句の端(指定部)であることが示唆されている.

また, Chomsky (2008) ではDP(決定詞句)もフェイズである可能性が指摘されている.

このフェイズの概念を取り入れることで, それまで仮定していたD-StructureやS-Structureを破棄し, よりミニマルな理論を構築可能になった点はミニマリストプログラムの成果の一つと言えるだろう.

参考文献

  • Chomsky, N. (2008). On phases. In R. Freidin, C. P. Otero, & M. L. Zubizarreta (Eds.), Foundational issues in linguistic theory: Essays in honor of Jean-Roger Vergnaud (pp. 133-186). MIT Press.

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