先延ばし


ミニマリストプログラムでは, 言語は可能な限り経済性を高める設計がなされていると考える.

そのため, 様々な特性が言語には備わっていると考える.

Procrastinateもその特性を受ける原理である. 今回はChomsky(1994)に基づいて, このProcrastinateをまとめる.

Procrastinateとは, 表層的な(目に見える)移動よりも潜在的な(目に見えない)移動を優先するという経済性の原理である. 言い換えれば, 「派生の収束に不可欠でない限り, 移動はスペルアウト後まで遅延させよ」と命じるものである.

もう少し具体的に言うと, ある文を生成するために複数の派生が考えられる場合, Procrastinateの原理によって, 移動操作をスペルアウト後まで遅らせる(covert movement)派生が, スペルアウト前に行う(overt movement)派生よりも優先される.

ただし, 表層的な移動が派生を収束させる(converge)ために不可欠な場合は, この原理は破られる. 例えば, ある素性をスペルアウト前に照合しないと派生全体が破綻する(crash)場合には, Procrastinateに反してでも, 表層的な移動が強制される.

このような制度設計のもと, 言語設計を考察する.

参考文献

  • Chomsky, N (1994). Bare phrase structure (Vol. 8). Cambridge, MA: MIT press.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です