引き続き, Bodeの Coordination and the Strong Minimalist Thesis を読んでいる.
以前の投稿でも触れたが, Syntaxへの入力は何かという文脈でThe Atoms of Computation (計算の原子) は何かを検討していた.
そこに対して, 今回はThe Atoms of Computation (計算の原子) はFeatures (素性) ではないと述べている. 今回は, この対比を次のようにまとめてみた.
| Aspect | The Atoms of Computation (UG Atoms) | Features |
|---|---|---|
| Entity |
カテゴリーと語根 (例: n, v, T, 値を持たない |
特性または値 (例: [plural], [past], [uD]) |
| Structural Property |
非構造的 / 単純 構造は併合 (Merge) によってのみ生成されるため, アトムは非構造的でなければならない. |
複雑 素性や値はアトムを「複雑な対象」にしてしまい, UG (普遍文法) の要件から外れることになる. |
| Associated Operation |
併合 (Merge) アトムは集合形成 (併合) を受ける. |
一致 (Agree) 素性は一致 (Agree) に対して可視的であるが, 併合に対してはそうではない. 素性は集合形成を受けない. |
| Domain |
UG (第一要因) 一様で生得的な能力の一部である. |
外在化 (Externalisation) 外在化およびPHON (音韻部門) への晩期挿入 (Late Insertion) において関連を持つ. |
| Universality |
一様 言語能力の普遍的な部分である. |
多様 個別言語間の区別 (変異) を生み出す目的を果たす. |
| Evolution |
創発 (Emergence) 再帰的操作と同時に突如として出現した (ステップ1). |
多様化 (Diversification) 多様化や言語変化の過程で後に発達した (ステップ3). |
| SMT Conclusion |
妥当な候補 有限・離散的・非構造的であるため. |
不適格 これらは「UGのアトムとして合理的な候補ではない」. |
個人的に興味深いのは, Features (素性) が複雑な対象であるため, UGの内容から外れるという点である. これはSMTの観点から考えると, 誠実に原則に則っているように思える.
参考文献
- Bode, S. (2024). Coordination and the Strong Minimalist Thesis. Routledge.