どのように等位構造は扱われてきたか
生成文法は2025年現在、約70年の歴史を有している. そして、その歴史の中で様々な理論の変遷を経てきた. そのため、同じ現象であっても、時代によって異なった分析やアプローチが用いられてきた. 本稿では、その中でも最初期と言える句構造規則(Phrase Structure Rule)の時代に、等位構造がどのように分析されてきたか、そしてその時代の問題点は何か、という点をまとめたい.
最初期の生成文法では、等位構造は基底にある節構造から同一部分を削除するという「変形による削除(transformational reduction)」によって派生するものと考えられていた. 次の例を見てみよう.
A. Ishiyama and Endo meet Kawashima.
B. Ishiyama meets Kawashima and Endo meets Kawashima.
これは、Bの文章が基底構造をなしており、それに対して変形(削除)が適用されることにより、Aの文章が生成されるという発想である.
しかし、この分析には主に2つの問題点があった.
- (等位接続構造とは別の根本的な問題として、そもそも)句構造規則(PS規則)には恣意性があった.
- Collective Readingsや、節構造へ還元すると非文法になったり意味が変わってしまったりするケースにおいて問題が生じた.
例:- Ishiyama and Endo sang together.
- Ishiyama sang together and Endo sang together.
- Ishiyama and Endo sang together.
これらの観点から別の説明が求められ、時代はXバー理論(X-Bar Theory)へと移っていく.
参考文献
- Bode, S. (2024). Coordination and the Strong Minimalist Thesis. Routledge.