崩壊
等位構造が他の構造と異なる独特の特徴を持つことは度々言及されている. この独特の構造を解明することが生成文法に求められる1つの難問であるわけだが, そこに対しては, 様々な提案がなされている.
Bode (2024) はChapter 6にて等位構造に関して, ラベリングはその集合に対して「崩壊 (collapsing)」のような効果を持つことを指摘しており, 非常に興味深い. これは簡単に言えば, 複数の要素が1つの塊として扱われるようになることである. 次の例文を見てみよう.(Chapter 6の内容を元に,例文は本ブログ執筆者で作成.)
- Ishiyama likes [the song and the music].
複数のDP (決定詞句) が1つのDPへと「崩壊 (collapsed)」した状態 - Ishiyama gave Endo a pen.
直接目的語と間接目的語で2つのDPとなっている状態 - Ishiyama finds Inaba a striver.
主語と述語で2つのDPとなっている状態
「崩壊 (collapsing)」というネーミングも非常に興味深いことながら, 分析としても非常に面白い. 他方で, 等位構造は, 異なるラベルのものも接続できることが確認されており, この点に関してはより深い研究が必要である. (実際Bodeも別の観点からこの点に関しての考察を行っている.)
参考文献
- Bode, S. (2024). Coordination and the strong minimalist thesis. Routledge.